一筋の光

 今年のヨコハマトリエンナーレの着想のもととなったという『華氏451度』を読んでみた。SFを読むのはずいぶん久しぶりだ。子供のころは、SFに興味があり、ジュール・ベルヌやF・ブラウンなどを読んだが、レイ・ブラッドベリの作品を読むのは、これが初めてだと思う。
 ここには、書物が禁制品となり、所持していることがバレるとやってきた昇火士(ファイアマン)によって焼き尽くされてしまうという、悪夢のような近未来が描かれる。
 本の魅力に気付いた昇火士のモンタークは、密かに本を所有する老人のフェーバー訪れる。モンタークは、フェーバーが自作した無線送受信器(銃弾ほどの大きさ)を耳に装着し、さてここから二人三脚で本の復権に向けての大活劇が始まるのか…と思いきや、モンタークはあっけなく無線器を失ってしまい、追いつめられてしまう。
 しかし、モンタークは逃走の途中、同志と出会う。ディストピアの中に、一筋の光は指すのだ。

これは、横浜トリエンナーレの出品作。ドラ・ガルシア作。『華氏451度』を鏡文字で複製して作ったペーパーバックを山積みにしたもの。