自転車だけが知っている…

自転車スローライド―昔と未来の風景へ

自転車スローライド―昔と未来の風景へ

先日横浜で最大級という「あおい書店」にふらっと寄って、面白そうな自転車本はないかと物色していたら、こんな本があるのを初めて知った。今までどの本屋でも見たことのない本。ネット上でも見た記憶がない。多分売れてないのだろう。いかにも地味というか垢抜けない装丁、岩波書店の売る気のなさ丸出しという感じだ。
それで、僕がどうしてこの本を買ったかというと、著者が横浜出身で、引地川とか湘南海岸とか丹沢という僕にも馴染みの神奈川県内のフィールドを自転車で走った記録が載っているから。といっても、自転車で走ること自体よりも、自転車で訪ね歩いた身近な自然や環境保護の現場をレポートすることに主眼がある。自転車を使わず、徒歩で訪ねた方がよいような場所のレポートも多い。『自転車スローライド』という書名は「看板に偽りあり」という感じがしなくもないが、僕にとってはなかなか興味深い内容だ。自転車好きというよりも、田舎の生活とか環境問題への取り組みについて関心のある人が読むべき本かもしれない。

多摩川や荒川などの大きな河川沿いのコースは意外と単調でもある。家から走って行けるならいいが、電車や車で自転車を運ぶとしたら何度でも出かける場所ではないとも思う。
(中略)その点、小さな川ならたいていの町を流れている。天気のいい午後にでも気が向いたらパッと走って行ける。たとえサイクリングコースが整備されていなくても、自転車なら走れる土手は多いし、「どこまで川に沿って行けるだろうか」と未知の要素が多くなるぶん、かえってワクワクする。しかも小さい川ほど風景はこまめに移り変わる。そこには、車では通れない、歩いては遠い、自転車だけが知っている秘密の散歩コースがある。
(水の章「神奈川県 引地川」より)

↑同感。
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