ためつ、すがめつ

今、国語総合の授業でやっている志賀直哉清兵衛と瓢箪の最後の方に、「ためつ、すがめつ」という言葉が出てきます。


修身の授業中に机の下で瓢箪を磨いていた清兵衛は、それを教員に見咎められ、瓢箪を取り上げられてしまう。教員は、それを「穢れた物ででもあるかのように、捨てるように」、年寄りの小使にやってしまう。小使は金に困ったときにその瓢箪を骨董屋に持っていく。

骨董屋はためつ、すがめつ、それを見ていたが、急に冷淡な顔をして小使の前へ押しやると、「五円やったら貰うとこう」と云った。

しかし、賢い小使は結局この瓢箪を五十円で買い取らせる。骨董屋はその瓢箪を地方の豪家に六百円で売りつける…


さて、この「ためつ、すがめつ」は高校生にはちょっと難しい言葉でしょう。これを『新明解国語辞典 第5版』で引いてみたら、語釈のあとに、こんな例文が出ているのです。

吉野ヶ里遺跡から出土した骨を、調査事務所の片隅で独り―数時間」
「人間の仲間としてのウマを対象に、縦、横、斜めから―した成果をまとめた写真集」
「新聞に載った大阪国際女子マラソンの写真を―眺めてしまいました」

さすが、やりますねー、『新明解』。ウマを「縦、横、斜めから」ためつすがめつした写真集って何なの? 「大阪国際女子マラソンの写真」のどこがそんなに面白かったの? 本当に変な辞書です。
ところでこの三つの例文は、『第3版』『第4版』にはなく、『第5版』になって、語釈の変更とともに突然現れます。『第6版』も『第5版』と全く同じ。『初版』『第2版』がどうだったのかはまだ確認していません。そして、この先、これらの例文は生き残るのか…

新明解国語辞典 第6版 小型版

新明解国語辞典 第6版 小型版



■学習の手引き■
課題1  「ためつすがめつ」を用いた短文を作りなさい。
解答例  骨董屋は清兵衛が持ち込んだ瓢箪をためつすがめつした挙句、冷淡な顔で『5円なら買うよ』と言った。


課題2  「○○つ、○○○つ」という言葉を挙げなさい。
解答例  「押しつ、押されつ」
      「抜きつ、抜かれつ」
      「あいつ、腹立つ」(違うか?)


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