ワルの風貌

『今井聖句集 バーベルに月乗せて』

先日、句集『鯊日和』(有馬五浪)と一緒に図書館で借りた本。
「謹呈 著者」と印刷された栞が挟まっていたので、著者が地元横浜市の図書館に寄付したのでしょう。鉛筆で○をつけるわけにはいかないので(と言っても、前に借りた人の丸印が三つほど見つかりましたが)、小さな付箋紙を貼り付けながら読んでいたら、結構な付箋紙の数になりました。


曼珠沙華頭のてつぺんまで不良


句集全体を見渡してみると、どうやら「不良」とは、著者自身のことではないかと思わずにはいられません。だって次のような句、ちょっとワルの匂いがしませんか。


卒業式さぼりコンドルを見にゆきぬ
新雪に突つ込む斬られ役として



斬られ役がサマになる男ってのは、だいたいワルの風貌を帯びているでしょう。学生の頃は学校の行事をよくサボってたタイプ。でも女性をだます、いや惹きつける才能に長けている。


波送るプールの端の恋人へ
青嵐早口言葉言わせてキス



で、こんなことにもなるわけで…


舌のやうな木蓮を踏み逢ひに行く
遊んでから名前を聞きぬ額の花
雪の予感指一本が背を下り



女心をくすぐる魅力もあるんですよ、きっと。たとえばこんな句はどうでしょう。


流星も入れてドロップ缶に蓋
出でし蟻に定規の橋と辞書の崖
虫籠の中の荒野を一騎来る



ちょっと武骨な印象もあるこれど、少年らしい感性も失っていないんですね。そんなところがこの人の魅力なんだな、なんてね、勝手な読み方をして、勝手に作者像まで作り上げてしまいました。ごめんなさい、今井さん。
でも、本当にこの句集には魅かれました。こんな句にも付箋を付けました。


この村の人は走らず青田風
栗落とすファーストミットの先端で
入道雲載せて分銅ひとつ足す



今井聖氏の主宰されている「街」のホームページものぞいてみましたが、冒頭の「宣言」と「メッセージ」も、グッと来ます。