「山月記」は友情の物語か?

授業で中島敦山月記を読んでいます。
一度読んだところで感想や疑問点を書いてもらいましたが、意外に思ったのはこの小説を李徴と袁傪の友情の物語として読んだ生徒が多いことです。李徴は虎になってしまったのに、そんな李徴の話に耳を傾ける袁傪に李徴への厚い友情を感じるというような感想を書いている生徒が何人かいました。
その一方で、袁傪は李徴がもっとも忌み嫌った俗悪な大官であり、李徴が虎となった原因になった存在なんだから、虎となった李徴に食われてもおかしくない人物なのだと書いている生徒もいるのです。なるほど、そういうとらえ方もあったか…
僕は今まで袁傪を李徴の語りを引き出す役回りとして作中に登場してくるのだと説明して片付けてきましたが、生徒の感想を読んでみて、今回はもっと二人の関係に深入りしてみてもいいかなと思いました。二人は本当に友情で結ばれていると言えるのかとあらためて問いかけてみたら、生徒は真剣に考えてくれそうです。
気に入った言い回しに線を引いていたら、今まで読んだ中で一番線が多くなってしまったと書いている女子生徒もいました。現代文の教科書にピンクのラインマーカーでびっしり線を引いて読んでいる女子高生が出てくるのは南木佳士の『海へ』ですが、そういう生徒が身近なところにもいたんですね。たしかに「山月記」は名文だなあって思います。朗読していて気持ちがいいんです。そのあたりのよさがわかってくれる生徒が何人かでも出てくればいいなと思います。
次の時間は、たくさん線を引いて読んだという女子生徒の教科書を見せてもらわなくちゃ。