『いま、君たちに一番伝えたいこと』

いま、君たちに一番伝えたいこと

いま、君たちに一番伝えたいこと

 池上彰が取り上げる話題は、政治、経済、歴史、教育など実に幅広い。そして、どんなに複雑な問題を取り上げる時も、常に平易に分かりやすく語ることができる。そして、自分の主張を押しつけるのではなく、読者が自分の頭で考えることを促す。こういう本は、多くの読者に(特に若い読者に)強く薦めたいと思う。
 たとえば、預言者ムハンマドの風刺画を載せてフランスの新聞社シャルリエブドが襲撃された事件を取り上げ、学生にシャルリエブドの方針を支持するかしないかを学生に問う。学生からの様々な意見に対してコメントを付けるが、決して一つの結論を強引に引き出すことはしない。池上彰は最後にこう言って締めくくる。

 みなさんは、そもそも表現の自由言論の自由という考え方が、時の権力者に対して人々が守るべき権利であるという歴史的な背景を知っておいてください。
 こうした議論を踏まえたうえで、表現の自由の意味を考えるきっかけにしてもらえたらと思います。

 東京工業大学での授業をもとにしたこの本は、学ぶことの意味を教えてくれ、学び始めるきっかけを与えてくれる。学生のアクティブ・ラーニングがここから始まる。