海はどこに

逗子文化プラザで行われた、「波多野睦美メゾ・ソプラノ・リサイタル〜つくろう、つなごう、日本の歌」を聴いて来ました。

波多野睦美は、プログラムのプロフィールに「古楽のフィールドを中心に活動し、バロック期の歌曲、カンタータ、宗教曲などで活躍」とあるのも頷ける、清潔感のある歌声が魅力の歌い手で、聞き慣れたのとは一味違う日本語の響きを聞かせてくれました。

実は僕にとってこのコンサートの一番の楽しみは、高橋睦郎による自作の詩の朗読でした。このコンサートを企画した僕の友人とのトークもなかなか興味深い内容でしたが、その中で二編の詩を朗読した時は、会場内にふわっと暖かい空気が満ちてくるような感じがして、心癒されるようなしみじみした幸福感を味わうことができました。今まで僕は高橋睦郎に対して、学者肌の近寄りがたい人というイメージを勝手に描いていたのですが、実際はとても温かく親しみやすいお人柄の方のようでした。

海は どこにありますか
つぶったまぶたのおくに

海は どこにありますか
ひろげた本のページに
閉じたピアノの鍵盤に (高橋睦郎「海はどこに」より)

これは、このコンサートのために書かれた詩の一節です。矢野義明によって曲がつけられて、素敵な歌曲になっていました。