芸術の美は人格美?

今道友信『美について』講談社現代新書)再読。

筆者が最終的に言いたいことは、美は人の生き方の中にある、ということだと理解した。

美は、愛や希望や犠牲と重なる、つまり宗教的な聖と繋がるものである。人間の理想とされる、真、善、美の中でも、美は人を動かす力を持つという点において、最高の価値を持つものである。したがって、美を追求する芸術についても、次のように位置づける。

芸術の姿は求道者の心のみが持っているある謙虚な美しさ、真の未来を求める美しさを内蔵していると見ることは出来まいか。芸術はこうして究極するところ、無意識のうちに求道者としての人格美を頂点にもつ営みなのである。

30年ほども前に、この本を初めて読んだとき、僕はこの部分に線を引き、その横に「この辺りが違和感の始まり」とメモしている。今回再読してみて、やはり同じような感想を持った。今道氏のような芸術観では掬い取れないような芸術もまた多く存在するのではないか?