国語の問題の問題

   紅野謙介国語教育の危機―大学入学共通テストと新学習指導要領』(ちくま新書)を読んだ。読む前から、書名を見ただけで内容が想像できてしまう。「大学入学共通テスト」について多くの大学が不安をいだいていることは、新聞でも報じられている通りだ。

https://www.asahi.com/articles/DA3S13714259.html

 本書は、既に公開された「サンプル問題」および「試行調査(プレテスト)」の国語の問題をつぶさに検討し、その問題点を指摘している。
 「新学習指導要領」のねらいを先取りする意図で作られた試験問題は、複数の文章(資料)にまたがった設問を用意しなければならないという要請に応えるべく、非常に無理をして作られたようで、この問題を解くことにどれほどの意味があるのかと疑わざるを得ないものが多い。また、短時間で多くの資料に目を通して答えを導き出さなければならない受験生の戸惑いは大きいに違いない。実際、プレテストの中には非常に正答率の低かった設問もあり、これで受験生の力を図るという機能を果たすことができるのか、はなはだ怪しい。

 筆者の批判は手厳しい。 

大学入試センターで英知を集めた結果がこのとおりです。サンプルの試験問題が困難であるならば、全国の高等学校で展開される定期試験や実力試験でも苦しいことになるのは目に見えています。実現の可能性と持続の可能性のきわめて薄い試みに、大学入試センターは無理やりチャレンジしているのではないでしょうか。

 大学入試問題は、高校生にこのような力をつけてほしいという指標になるものだから、我々国語の教師も日頃の授業の指針として常に意識している。本当に「プレテスト」のような試験が実施されるとしたら、授業の中でどのように対応すべきか、戸惑うばかりである。