飛ぶこと、読むこと

ほらふきじゅうたん

ほらふきじゅうたん

サンタクロースが届けてくれた、我が家の小学生の娘へのプレゼント。
娘の満足そうな表情を見て、僕もさっそく読んでみることに…
…なるほど、これならクリスマスに本を欲しがっていた子供の期待を裏切らないだろう。
おそらくこれを読んだ子どもは、言葉の紡ぎだす空想の世界に引き込まれつつも、その空想の世界を作り上げているのが他でもない言葉そのものであることを意識させられるのではないか。つまり、本を広げ、言葉をたどりつつ想像力を働かせている自分自身に気づくということだ。


主人公の女の子フェイスはトラのじゅうたんにたずねる。

「あなたも、空とぶじゅうたんになりたいって思わない?」

トラのじゅうたんが空飛ぶじゅうたんになれるとしたら、それは言葉の力をもってしかないことに気づいた読者なら、次のように答えるじゅうたんが単なるひねくれ者でも怠け者でもないことを了解するだろう。

「なにかになりたいなんて時間のむだだな。
おれの仕事は飛ぶことじゃなく、ここにねていることだ」

いつもフェイスをはぐらかすようなじゅうたんの饒舌にはしばしば一片の真実がまじる。
上の場面に続いて、こんな一節もある。

部屋のなかでは、ハエがぐるぐる飛んでいます。


フェイスは、ハエに話しかけました。
「すきなところに飛んでいけていいわね」
ハエはしらん顔です。


じゅうたんがいいました。
「ハエだって自由じゃないのさ。
ものは考えようでね……」

そのハエが言うように、言葉の世界では「うそとほんとはまぜこぜ」であることも、この本は教えてくれる。これは子どもの心に、言葉への信頼と不信とを同時に胚胎させることになる本なのかもしれない。