楽器博物館のガラスケースの中から出てきたような楽器たち。
ヴァイオリンのような、チェロのような、ファゴットのような。
ステージの上で、それらは柔らかい光を浴び、コンサートの始まりを待っている。
開演のチャイム。
奏者たちの入場。
調弦。
ステージの照明が落とされる。
たちまち、木のホールは17世紀の響きで満たされる。
やがて、宮廷人たちの囁きが、嘆きが、聞こえてくる。
笑い声や怒声が飛んでくる。
21世紀の横浜に現出した異空間。
たった八十分間の至福のひと時。
鳴り止まぬ拍手が、それを二度、三度とステージに引きずり出す。
終演。
けれども頭の中の17世紀の響きはいつまでも消えない。
外はまだ4月の陽光が溢れている。
音楽堂の裏手の掃部山公園では、桜の木がしきりに蘂を降らせている。
その上に突き出たランドマークタワーが西日を浴びて眩しい。
ル・ポエム・アルモニーク