もう一度吹きたいシューベルト

チケットをいただいたので、はるばる大江戸線の終点まで行って、光が丘管弦楽団のコンサートを聴いてきました。
僕が参加しているオケとちょうど同じ規模の小編成管弦楽団ですが、なかなかの腕前の奏者が多いようで、「負けたかな…」という感じでした。
メインのベートーヴェンの「田園」は、1st、2ndヴァイオリンが各6、チェロ、ビオラが4(5だったかな?)、コントラバス3という、この曲の編成としてはおそらくこれが最小という人数での演奏でしたが、弦楽器は十分に豊かに鳴って管楽器との音量のバランスも良く、小編成のメリットを存分に生かした小気味のいい好演奏でした。
シューベルトの「第5交響曲」は僕の大好きな曲の一つで、これが楽しみで行ったようなものだったのに、駅から1分のはずの会場がなかなか見つからず10分以上もうろついてしまって、1楽章の前半を聞き逃してしまいましたが、これも曲の魅力を十分に引き出して生き生きとした名演でした。
この曲は僕も4年ほど前に演奏しており、そのときのプログラムの曲目解説を自分が担当したのを思い出したので、そのプログラムを引っ張り出してきて見たら、なんとこんなことを書いていました。
これはクラリネット、トランペット、ティンパニーを欠いた編成になっているために、通常の編成のオーケストラにとっては演奏会の曲目として取り上げにくい曲になっている。しかし私たちのような小編成のオーケストラにとってはそれが逆に好都合であるし、しかも演奏する楽しみという点では、あの有名な「未完成」や「ハ長調(グレート)」を凌ぐとさえ思われる。
これはもう完全に「自己チュー」になりきっちゃってますね。他の楽器の奏者がどう思っているかには頓着せず、自分の吹くファゴットパートがめちゃくちゃ面白いんだからみんなも面白いはずだという独善に陥っています。さらに、
この曲の魅力は、明るい響き、軽快な音の流れが耳に心地よいというレベルにとどまるものではもちろんない。それは、たとえて言うならば、春風に髪をなびかせ未来を見つめる若者の、期待と不安の入り混じった眼差しの奥にあるものが私たちを惹きつけ、またある種の郷愁を呼び起こさずにはいないという点にあるのではなかろうか。
などと、書きながら自分自身に酔ってしまっているような、今冷静に読むと恥ずかしくなるような似非文学的文章になっちゃってます。しかもこのときの演奏はそれなりに満足して吹き終えたのに、後で録音を聞いたら、気持ちが空回りしてしまったせいか、実はあちこち傷だらけであったということがわかって、がっかりしたことを覚えています。
光が丘管弦楽団は、プログラムによるとこの曲を取り上げるのは2回目なのだそうです。26回の中で2回というのは、さほどポピュラーでない曲としては頻度が高いのではないでしょうか。
なんといっても、名曲ですからね。
とにかくファゴットが面白い! 僕もぜひもう一度、この曲に挑戦して前回の屈辱を晴らしたいと思っているんです。どこかで吹かせてくれないかなあ…