幸運を引き寄せる力

『水のかたち』下巻、読了。

水のかたち 下

水のかたち 下

能勢志乃子は、その幸せを彼女一人の力で掴み取ったのではないが、それは彼女だからこそ呼び寄せることができた幸運なのだと思う。彼女には本人も自覚する通り、優柔不断なところがあるが、人を見る目、モノを見る目がある。それが彼女の強みだ。
そんな能勢志乃子がこれから始める喫茶店の名は「グールド」。
楢と杉の天然木だけで作られた重厚な佇まいの店内には、目利きが選んだ高価な焼き物が並んでいる。こんな店で、高音質のスピーカーから聞こえてくるジャズに耳を傾けながら、極上の珈琲を飲めるんだったら、僕はわざわざ神田まで出かけて行ってもいい。運が良ければ能勢志乃子と言葉を交わすことだってできるかもしれない。その時にはきっと、『水のかたち』を読み終えた時の幸せな気分が甦ることだろう。


『水のかたち』上巻