原発はなくせる

脱原子力社会へ――電力をグリーン化する (岩波新書)

脱原子力社会へ――電力をグリーン化する (岩波新書)

昨年の大地震によって、あれほど重大な原発事故が起きたにもかかわらず、日本で反原発脱原発の機運がさほど高まらないのがどうも歯がゆい。ドイツなどは、フクシマ以後、いち早く脱原子へと政策転換を打ち出すことができたのに。地震大国であり被爆国でもある日本は、今こそ率先して脱原子力を志向すべきではないのか。
では、日本も政策を転換したとして、現実問題として脱原子力は可能なのか。
『脱原子力社会へ――電力をグリーン化する』(長谷川公一著、岩波新書によれば、次の方法の組み合わせ(Aのみ、A+B、A+B+Cのいずれか)によって原子力発電所をなくすことができるという。


A、火力発電の設備利用率の引上げ。(二酸化炭素排出を抑えるため、できるだけ天然ガス発電所を活用する。)
B、節電。
C、太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーを徐々に導入してゆく。



Bの節電について、長谷川は「小規模の発電を各消費者がやっていることと同じ」ど述べ、さらに次のように続ける。

環境への新たな負荷は全くない。二酸化炭素の排出量も増えない。放射性廃棄物の処理や事故の心配もない。発電所を増やすのは一時しのぎでしかないのに対して、省電力の効果は長期的で持続的である。

Cについては、市民風力発電所を成功させた北海道グリーンファンド運動などの例が紹介されている。

日本は、フクシマ事故を契機として、ドイツのように、未来志向的な「脱原子力大国」への転換を宣言すべきである。日本が旗手となって、エネルギー利用の効率化と再生可能エネルギーの普及にかかわって、二一世紀の技術立国として生き残ればよい。「停電か、原子力か」「温暖化か、原子力か」と国民を脅すのは、きわめて後ろ向きの選択である。

これからの日本が賢明な選択をし、生き延びていくことを信じたい。


節電.GO.JP