『憲法九条を世界遺産に』を読みました。そして、この本を徹底的に批判しているサイトにもいくつか目を通してみました。
以下、僕なりに考えたことの一部です。
「憲法九条」には現実と照らして矛盾があることは明らかです。真剣に平和を願う立場から「改正」を唱える人たちの声には謙虚に耳を傾けたいと思います。しかし、「憲法九条」には、日本が国際平和を希求するという宣言だけではなく、紛争解決のための武力行使が地球上からなくなって欲しいという崇高な願いが込められているのではないか、というのが僕の「九条」解釈です。ですからもしこれが「改正」される時が来ても、現在の「九条」はこのまま人類の理想として高く掲げておきたい。そういう意味では「世界遺産に」という表現は、なかなかうまい!と思うのです。
- 作者: 太田光,中沢新一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/08/12
- メディア: 新書
- 購入: 4人 クリック: 92回
- この商品を含むブログ (290件) を見る
芸術作品を見たときに、感動するのは、そこに誤解というギャップがあるからでしょう。作者の意図とは違うところで感動が生まれることはいくらでもあるし、むしろその幅が作品の力であると思う。
同感です。もちろん「芸術作品を見たとき」を「本を読んだとき」に置き換えてもいいし、「憲法を解釈するとき」としてもいいはずです。「憲法九条」は様々に解釈されていますが、そうした解釈の幅を許してきたことがこの条文の力を示しているのであり、またその解釈の幅が今の日本を支えているとも言えるのではないでしょうか。
芸術について言えば、同じ作品に対する様々な解釈を前提に人と意見を交わすことには、実に深い知的興奮が伴うものです。
「憲法九条」について言えば、解釈の幅が存在することを許容しながら国民的な議論を十分に深めることが、今後の日本にとって確かな実りをもたらすのではないでしょうか。
広い層の国民を改憲論議に巻き込むきっかけを作ったという意味で、お笑い芸人太田光の果敢な(そして、やや無謀な)挑戦には心から敬意を表したいと思います。いつの間にか変わっていたというのが一番危険ですから。