ここに木があったら…

いつのまにか、道を歩いていても、電車から外を眺めていても、ここに木が植わっていたらいい日陰ができるのに、あそこに木があれば殺風景な景観がずっとよくなるのにと、そんなことばかり思うようになりました。自分の家の敷地にもう一本も木を植える余地がなくなってしまったせいか、今度は他人の家の庭を見て、あそこに木を植えるスペースがいっぱい残っているのに、もったいない、僕だったらあそこらへんにエゴノキかヒメシャラを植えるのに、などと考えているのです。実際、そんな目で眺めてみると、木を植えればいいのにと思う場所は、いたるところに見つかります。
今の僕にとって、美しい町、美しい国とは、緑の多い町、緑の多い国とほぼ同義です。もちろん、人工的な建造物の美しさというのも存在します。『木を植えよ!』(宮脇昭著)を読んで初めて知ったのですが、横浜の赤レンガ倉庫の周辺には「せっかくのスペイン風の景観が台無しになる」という理由で木を植えなかったそうです。確かにあの石の構築物のかもし出す独特の魅力は、安易に緑を配することで減じてしまう恐れがあります。しかし赤レンガ倉庫の一角は別格として、横浜の「みなとみらい」は、僕としてはぜひ緑豊かな街に育って欲しいと願っています。それは緑の景観が与えてくれる潤いや安らぎを求める気持ちでもあり、温暖化を食い止めることを何よりも優先すべきだという思いでもあります。

木を植えよ! (新潮選書)

木を植えよ! (新潮選書)

『木を植えよ!』は、森の効用を説き、森を作ることを勧めます。実際に国内外で、多くの植樹事業に関わって来た植物生態学者の、次のような言葉には重みがあります。

今、最も森をつくらなければならない場所は、山地でなく、人口が集中している都市です。…
…心身ともに豊かな生活環境を持続的に保証するためには、人工的な材料で造られた環境と、最低限共生できる程度の「本物の緑環境」が必要です。モダンな都市計画、建築計画の中にこそ、思い切って本物の森づくりを取り入れるべきです。

『木を植えよ!』を読み終えた僕は、自分の庭以外に木を植えられるところはないだろうかと、ちょっと本気で考え始めています。まずは、ウチの学校のグランドの北東の角あたりかな…