「永き日の…」

もう十数年も前に職場の仲間とやっていた句会に出した拙句に、「永き日の鯉浮かび出てすぐ沈む」というのがあります。少しは点数が入ったような記憶がありますが、自分でも気に入っている句です。その後、少しずつ俳句の本を読んだり雑誌に投句などしているうちに、これは「永き日鯉浮かび出てすぐ沈む」と、上五ではっきりと切った方がいいのではないかと思うようになりました。
ところが今日、角川の『俳句』5月号の中に

永き日の人なき椅子に日の当る  藺草慶子(特別作品21句「うららけし」より)

という句を見つけて、「永き日や人なき椅子に日の当る」にしたらどう違うのだろう、この場合はやはり「の」だろうか、などといろいろ考えてしまいました。僕の句の場合もやっぱり「永き日の鯉…」かなあ。もっとも中七下五も他に言いようがありそうだけど。
ところで藺草慶子氏は、俳句文学館で俳句の授業法についての講義を聴いたことがあるので、なんとなく身近な存在に感じている人です。好きな句は、

てつぺんにまたすくひ足す落葉焚
牛の舌巻きこむ草の氷かな
枯草のつきたる象の睫毛かな

「うららけし」の中では「永き日の…」の他に

掘り返す土に根が見え涅槃西風
あたたかや見上ぐるほどに木々は伸び

がいいと思いました。明日は天気がよければ伸びすぎた木の剪定をするつもりです。