「渦」に飲み込まれないように

黒岩徳将、第一句集『渦』。街句会でお会いしたときに、句集を出しましたと差し出され、即、購入。後日、サインをもらう予定✌('ω'✌ )

句集 渦

句集 渦

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  青島麦酒喧嘩しながら皿仕舞ふ

中国人同士の威勢の良い会話は、しばしば口喧嘩をしているかのように聞こえる。今、中華料理屋の厨房の方から聞こえてくる二人(夫婦?)の声も、まるで喧嘩のように聞こえるが、いつもあんな調子なのかもしれない。どっちにしても、この店の餃子の味には満足。青島麦酒、もう一本!

  杭摑む蜻蛉脚一本余し

六本の脚のうちの一本は遊んでいる。見事な観察!

  ごんずいを眺めて胃腸薬が効く

ゴンズイは毒を持つ魚。棘状の胸鰭、背鰭に刺されると強い痛みに襲われるという。そんなゴンズイを見ていると、胃腸薬の効き目が良くなるという不思議。なんだか納得させられてしまう。

  絵筆溶くやうに金魚が水槽へ

「絵筆溶く」は絵筆についた絵の具を水に溶かす、ととった。赤い絵の具が水に溶け込むように、金魚が水槽へと滑り込む。清楚な水彩の画面が見えてくる。「子烏の口それぞれに炎なす」の方は、もっと鮮烈な赤。

  フィッシングメール藤棚にて消去

腰を下ろして小休止できる場所がないかと思っていたら、ちょうどいい藤棚の日陰を見つけた。喉を潤してから、スマホでメールをチェックする。新着メールの中の怪しげな奴をうっかり開きそうになったが、思いととどまって、削除。どこに危険が潜んでいるか、わからない。そんな気の抜けない世界を、我々現代人は泳ぎ切っていかねばならないのだ、「渦」に飲み込まれないように。

 

  宿の鍵放りて布団凹みたる

  白玉やバンド解散しても会ふ

  ドアノブを夜食の盆で押して入る

  自転車に案山子一体担ぎゆく

  校庭に二つの試合桐の花

  水仙や電車が見えて小走りに