感情は何のためにあるか

アンデシュ・ハンセンスマホ』(久山葉子訳、新潮選書)

売れた本が、自分にとっても価値のある本であるとは限らない。

多くの人がスマホの画面を一日数時間眺めているとか、スマホが様々な弊害を起こしていると知っても、そうだろうなと思って驚きはしない。短期間の間に人間の行動様式が大きく変化してしまったが、人間の脳はそれに適応できていないと言われても、それはそうだろうと思う。それは日々実感させられていることだから。
「毎日1~2時間、スマホをオフに」とか「スマホを寝室に置かない」などというアドバイスは、もともとほとんどスマホを使わない僕には意味がない。

この本から得た僕にとっての最大の収穫は、感情の働きについて知ったことだ。
感情は人間を生き延びさせるための行動に導く働きがあるのだという。

感情というのは「自分を取り巻く環境への感想」ではない。周りで何が起きているかに応じて、身体の中で起きる現象を反応としてまとめたものだ。それが、私たちを様々な行動に出させる。

脳は、生き延び、遺伝子を残すために今何をするのが最善か、という問いに常に感情という形で答えようとしている。恐怖は、外敵から逃げる、あるいは攻撃するために最大限に力を発揮できるような心身の状態を作り出す。

確かに、人にとって重大な問題は、過ぎたことをどう思うか、ではなく、次にどう行動するかだ、脳はそのためにある、と言われてみれば、なるほどと深く納得する。