生き方の多様化に向けて

本田由紀の『教育は何を評価してきたのか』(岩波新書)を誰かが推していたので、読んでみた。

著者の主張を大まかにまとめると、次のようになる。
日本社会は諸外国と比べ、垂直的序列化(人を「能力」という物差しで縦方向にランク付けする)と水平的画一化(皆が同質であることを強いる)の傾向が著しい。
一方で、水平的多様化(様々な生き方の許容)の度合いが低い。それが社会の閉塞感(息苦しさ、生きづらさ)につながっている。
解決に向けては、垂直的序列化が凝縮して生じている高校を、学科を多様化するなどして改革する必要がある。また、水平的画一化を脱するためには、特定の資質・態度を教育の目的として要請する教育基本法を、個人の内面の自由を宣言する内容へと再改定する必要がある。
そのような方向に社会を変えていくためには、(以下、本書より引用)

戦前の「教化」の体制をよりハイパーな形で復活させようとしている、自民党政権およびその背後にある保守団体の姿勢を根底から転換させるか、あるいは彼らを政権の座から下ろすか、いずれかが必要であるということである。
様々に異なる生き方を尊重し、誰もが可能性を発揮し安心して生きて行けることを目指す水平的多様化という方向性は、それほど社会全体の本質的なあり方と深くかかわる、重要な理念であり目標なのである。(p233)

政権交代が再び実現したとしても、今の社会の閉塞感を打ち破ってくれるだろうなんて、期待できるのかな…