「の」の用法について

続 折々のうた』読了。

  君や来む我や行かむのいさよひに槇の板戸も閉さず寝にけり  よみ人知らず

古今集』巻十四のこの歌について、次のような解説がある。

「……行かむの」の「の」はその上でのべたこと全体を一つの成句として受ける語法。後年与謝野晶子ら「明星」歌人が愛用した。

この「の」を音数を無視して他の語に置き換えるとしたら、「といふ」とか「との」になるだろうか。現代語訳すれば「私は行こうかどうしようかというためらい」。同じ用法の「の」が使われている歌を少し探してみたが見つからない。どなたかご存知の方、ご教示ください。*1

ところで、大岡信は解説中では言及していないけれど(当たり前すぎるから?)、「いさよひ」には十六夜の月のイメージを重ねて読むべきなんでしょうね。

 

追記(2月22日)

職場の同僚が次の歌を教えてくれた。

  丹波道の大江の山の真玉葛絶えむ心わが思はなくに万葉集、3071)

*1:日本国語大辞典』の「の」の項には、「中世中頃、漢文訓読の場から、『あざむかざるの記」の用法が成立する』との記述がある。この「の」と同じようにも思われるのだが。