評論? 随筆?

編者(千葉俊二)による「解説」にもあるように、「随筆とはいかなる形式のもので、小説と随筆、評論と随筆はどのように違うのか」というのは難しい問題で、実際、この作品はどっちに分類したらいいのだろう、ということはままある。
本書には小林秀雄の「無常ということ」が収められているが、これは現代文の教科書には「評論」教材という扱いで収録されている。筆者の経験が語られる前半は随筆風の書き方になってはいるが、後半は前半に語られた経験に基づきながら、難しい問題に踏み込んでおり、いわゆる論理的な文章読解のセオリーにのっとった読みが求められる。もちろん、セオリーだけでは太刀打ちできない小林秀雄一流の不親切な書き方に読者は悩まされることになるわけだが。
「解説」の中で編者は、「(収録作の中には)一読しただけではすぐに理解しにくいものもあるだろう」と言っている。確かに本書には難解な文章もいくつかあって、よくわからないままさらっと読み飛ばしたものもいくつかあった。「無常ということ」は中でも最も難解な部類に属するが、読み飛ばすわけにはいかない。明日から現代文の授業で扱うので。