人間の真実を描く掌編小説

大西巨人『日本掌編小説秀作選』(上・下)

f:id:mf-fagott:20200603234648j:plain f:id:mf-fagott:20200603234705j:plain

日本文学の精華を集大成したという趣の二冊だが、面白い作品を集めてみたらこうなりましたではなく、それらの作品群を貫いて一本の筋を通そうという編者の意図が強く感じられる。つまりは大西巨人という人間の個性が強く前面に表れたアンソロジーである。
作品の多くは、人間が秘め持つ暗部を容赦なく炙り出すといった体のものだ。美とか、感動とかではない、人間の負の側面に光をあてたような作品が多いと感じる。人間の真実から目をそらすな、というのが編者が通そうと意図した一本の筋であると、僕は読んだ。