夏井いつきを読む

 仕事帰り、図書館に寄って、夏井いつき句集 伊月集 龍』を読んだ。


  遺失物係の窓のヒヤシンス

  しつかりと握つたはずの初蛍

  たむろして金魚のよしあしを論ず 

  そこにまだありをととひの鵙の贄

  台本になく咳き込んでをりにけり

  善玉のはうの狐火つれてくる

  考へてをるとも見えて冬耕す

  地下鉄のふいに桜の中に出る

  花びらを追ふ花びらを追ふ花びら

 

 あと一句選べばちょうど十句になるので読み返していたら、スピーカーが閉館の音楽を鳴らし始めたので諦めた。前書きで黒田杏子が選んだ十句と重なっていたのは、「そこにまだ…」の一句だけだった。

 それにしても、「いつき」と「伊月」では随分イメージが違う。「伊月」はどうしても「いげつ」という読みが浮かんできてしまう。 

句集 伊月集 龍

句集 伊月集 龍