「当用漢字表」がキラキラネームの隆盛をもたらしたのか?

キラキラネームの大研究 (新潮新書)

キラキラネームの大研究 (新潮新書)

 

  キラキラネームが目に付くようになってくるのは1990年代の中ほど。団塊ジュニア世代(1970年代生まれ)が子育て期に入り始めた時期と重なる。
 では、団塊ジュニア世代に何があったか? 彼らは「当用漢字表」施行により、漢字の平易化が完成し、「漢和辞典的」な規範の引力の及ばないところで育った世代である。それが彼らのカジュアルで感覚的な漢字使用の要因となり、現在のキラキラネーム隆盛へとつながっている、というのが筆者の論。
 団塊ジュニア世代は「漢文の素養をもとに“塩梅”していく術を知らない世代」であるために、「一般的な漢字の読みを無視した突飛な当て字を使ったり、外来語を無理やり漢字に当てはめたりするようになった」というのである。
 確かに、なかなか面白い考え方であるとは思う。しかし、キラキラネーム現象にとって、「当用漢字表」はそれほど大きなファクターであっただろうか? 団塊ジュニアよりも前の世代が、筆者の言うほど「『漢和辞典』的な規範」を意識しながら子供の名づけをしていたのか、という点については、首をかしげざるを得ないのである。