初めての原田マハ体験

 『楽園のカンヴァス』読了。ミステリーや冒険小説を読むようなワクワク感を味わわせてくれる一方で、読者を陶然とさせるファンタジーの雰囲気も漂う。国境を越えた切ない恋の物語としても読める。
 そして、西洋絵画に興味を持つ読者にとっては、業界の裏側を覗き見る楽しさもあるし、20世紀初頭の美術史の魅惑的な舞台に立ち会えたような面白さも感じさせてくれる、とにかくサービス満点の小説だ。さらには、どこまでが史実でどこからが創作なのか、美術史の本を調べないではいられなくなる、罪作りな作品でもある。
 以前から気になっていて今回初めて読んだ原田マハだが、読者を最後まで惹きつける、なかなか才能豊かで魅力的な作家だと感心した。