発見! 長谷川利行

 企画展と常設展を同時開催するような大きな美術館では、企画展のチケットで常設展も観覧可能となっているケースが多いと思う。とはいえ、企画展を見た後ではもう疲れちゃって、常設展の方はおざなりというか、観たとしても駆け足、という感じになってしまうことがほとんどだ。だから常設展は見られなくていいから、企画展の値段、もっと安くならない? などと言いたくもなってしまう。ところが、先日の東京国立近代美術館は違った。
 目的は今も開催中の「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」と「マルセル・ブロイヤーの家具」の二つの企画展。この二つだけで十分お腹一杯、という感じだったので、いつも通り常設展示の方は、ささっと済ませてラーメンでも食って帰ろう、というつもりだったのに、いざ観始めたらあっちこっちで捕まってしまって、常設展示だけでも一日たっぷり楽しめるじゃん、というくらいの充実ぶりにびっくりしてしまった。
 岸田劉生の「道路と土手と塀」とか、佐伯祐三の「モランの寺」とか、古賀春江の「海」とか、いい絵がいっぱいで。そんな中で、作者は初めて聞く名前だけれど、魅了させられた作品群があった。長谷川利行。人物も静物も風景も、温かみがあっていいんだなあ。(展示作品は、一部を除いて撮影可能でした。) 

 これは、カフェ・パウリスタという題の油彩だが、解説を読むと、ここに展示されるまでの経緯が書いてあって、面白い。

 下宿屋のご子息が鑑定に出したというテレビ番組は、僕も時々見るなんとか鑑定団というやつだろう。番組の中でいくらの値段が付き、美術館はいくらで購入したんだろう、作品を手放した下宿屋のご子息は生活が一変しただろうか、などと下世話な興味が尽きないのである。