定番教材に新しい光を!

 面白かった!
 「超入門!」とうたっている通り、高度な内容が分かりやすく書かれているのはもちろんのこと、実例として挙げられている作品が羅生門』、『山月記』、『舞姫という高校の国語の定番教材であるところが嬉しい。
 これらの作品を取り上げる授業はどうしても毎回同じパターンになりがちだが、「統制的規則」、「制度的事実」などといった用語を当てはめてみることで、作品に新しい光があたったように、たとえば『羅生門』が今までと違った新鮮な姿を見せてくれる。あるいは、プロップの「物語構造論」を当てはめてみることで、『山月記』や『舞姫』の中に『桃太郎』との共通点を見出すことができる。
 文学の好きな高校生にはぜひこういう本にチャレンジしてほしい。そして、『羅生門』の授業で、「僕にとって印象的だったのは、

下人の心理の移り変わりやエゴイズムの問題ではなく、下人と老婆の会話に現れた日常言語の崩壊した世界であり、そこに展開する生々しい現実、生の現実の世界

でした」なんて発言してくれると、俄然、こっちもやる気が出てくるんだけどな…