『なぜ「大学…」』は誰に勧めるべき本か?

 『なぜ「大学は出ておきなさい」と言われるのか』というタイトルに食いついた人は、「騙された…」と思うかもしれない。その問いには、「第2章 何のために勉強するのか―可能性を広げる教育」で答えてくれてはいるものの、他の章はこの問いとの関連性は薄い。サブタイトル=「キャリアにつながる学び方」の方が、むしろこの本の全体像を表している。(この手のタイトルの付け方はよくあるパターンだ。)
 「第1章 『働く』ことの5W2H」は、働くことの基本を要領よくまとめてあって、高校生がぜひ一度は確認しておきたい内容。
 「第3章 進路選択に向き合うとき」は、そろそろ大学受験準備を始めようかという高校1、2年生へのアドバイス
 「第4章 学び方が変わる―大学入学準備講座」は、もう大学に合格して新年度を待つばかり、という幸せな高校生向きの内容。
 「第5章 本当に身につけるべき『チカラ』とは」は、まじめに勉強して自分を高めようとする、殊勝な心構えの大学生のために書かれている。
 いずれにしても、読むべき読者は高校生から大学1、2年生に絞られるが、何を一番伝えたかったのか、内容的にはもっとポイントを絞った方が良かったのではないか。どの章も、掘り下げ方がやや中途半端という印象は否めない。