徳富蘆花「漁師の娘」
宮本常一「土佐源氏」
若山牧水「みなかみ紀行」
いずれも、かつて日本にはこんな時代があったんだということを思い出させてくれる3編。
…と言っても、どれもまだ僕が生まれる前の話。
若山牧水が「みなかみ紀行」の旅をしたのは1922年。このとき牧水が利用した草軽鉄道(当時の名は草津鉄道)は、1962年に全線廃止。もちろん、交通機関だけではなく、なにもかもが変わってしまったのだから、牧水のような旅にあこがれても、もう本の中で追体験するしかない。
土佐の山中で乞食をする老人が、「おなごをかまう事ですぎて」しまった80年の人生を語る「土佐源氏」は、かなりエロチックで生々しい話だけれども、なぜか読後にさわやかな印象を残す。宮本常一の人間愛に支えられて、このような作品が産み落とされたのだろうか。
■今までに読んだ「百年文庫」
→嘘
→街
→季
→灰
→店
→幻
→庭
→音