第九ではなく…

2011年の締めくくりは、東京文化会館小ホールでのコンサート。



ベートーヴェンの後期のカルテットを一気に8曲も聴き通すというのはそれなりの集中力の持続が求められる。大晦日にわざわざそんなコンサートを聴きに行くなんて酔狂なことと思われそうだが、同好の士というのはいるもので、会場は結構な人で賑わっていた。
8曲を三つの団体で演奏するのを通して聴くとなると、どうしてもその三つを比べてしまうことになる。
ラズモフスキーの3曲を演奏したクァルテット・エクセルシオ、12番・13番を演奏した古典四重奏団は、ともに手堅く緻密な演奏で、特に1stヴァイオリンが二人ともとても魅力的な演奏を聞かせてくれた。しかし、残念ながら、どちらも2ndヴァイオリン以下(とくにビオラ)の表現に積極性が足りないように感じたし、少なくとも僕の席からは中低音域の音量不足が気になった。4つの楽器が対等に自己主張することによって、ベートーヴェンのカルテットはその魅力を露わにすると思うのだが。
その点、14・15・16番を演奏したルートヴィヒ弦楽四重奏団は、それぞれの奏者が自主性を発揮し、どの楽器も十分に鳴っていて、ホールにシンフォニックな響きが溢れた。ただ、前の二つが常設の楽団として活動し、楽曲を十分に弾き込んでいるのに比べると(古典四重奏団は全曲暗譜だ!)、寄せ集めの楽団の弱さか、音色の華やかさと引き換えに音楽はやや生硬で、ベートーヴェンの後期のカルテットの魅力に迫り得ていたかは疑問。それにこれも弾き込み不足のせいか、小さなミスもあったし、音程のズレの気になる個所もあった。それでも僕はそこそこ満足することができたので、演奏後の拍手が前の二つに比べて少なく、ブラボーの声もなかったのが寂しかった。
初めに「同好の士」などと書いてしまったけれど、実は僕などよりずっと耳の肥えた聴衆が多かったのだろう。