TUTAYAまで、現代文の授業で見せる『鉄道員』のDVDを借りに行ったついでに『マイ・アーキスト ルイス・カーンを探して』というのも借りて来た。僕はルイス・カーンという名前すら知らなかったのだけれど、いったいどんな作品を残した人なのか、興味がわいたのだ。
観てみると、このドキュメンタリー映画は、建築よりもむしろその設計者であるルイス・カーンという人物を追うことに主眼があった。そして、たまたま同時に借りた『鉄道員』との間に、意外な共通点があることに気がついた。
『鉄道員』の主人公、佐藤乙松は根っからの仕事人間で何よりも仕事を優先、そのために自分の娘の死に目にも妻の死に目にも会えない。「俺はぽっぽやだから、身内のことで泣くわけにはいかない」と言って、涙を見せることもない。家族を深く愛してはいるのだが、職責を全うしようという気持ちは頑なといっていいほど強く、それゆえ家族への負い目を感じつつ生きることになってしまう。しかし乙松は、最後に不思議な形で家族からの許しを得ることになる。
ルイス・カーンもまた、仕事への情熱と家族への愛情のはざまで人知れず苦しんだ人間なのではないか。妻と二人の愛人の間にそれぞれ一人ずつの子供をもうけ、それぞれに愛情を注いだが、一般的な意味での幸せな家庭を築くということにはならなかった。しかし、ルイス・カーンが愛人との間に残した息子、ナサニエル・カーンは、世界中に残された父親の建築作品を訪ね、父親と関わった人たちの証言を集めて制作したこの記録映画の最終章において、ルイス・カーンは建築という仕事を通して人々への普遍的な愛を実現したのだという認識に至る。
佐藤乙松は自らが駅長を務める駅のホームで倒れるが、ルイス・カーンが突然の最期を迎えたのもペンシルバニアの駅だった。
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