読む力をつける本

「先生、読解力をつけるにはどうしたらいいですか。」
と聞かれて、
「それはね、本を読むしかないんだよ。それから読解問題をたくさん解くことかな。」
などと答えつつ、内心、(ウーン、国語の教師らしくもっと気のきいたことが言えないもんかな)と思ったことが今まで何回あっただろう。
文章を速く、正確に、深く読むための技術というのものは、ある。しかし、それを人から教えられて身につけたのではない私たちは、それを人にどう教えたらよいかもよくわからない。読書体験の積み重ねからいつの間にか身についた読む技術を意識化し、それを積極的に生かす方法を生徒に伝えられれば、生徒に対して、
「僕の授業を受けていれば、読む力はつくよ。」と答えられる、はず。
石黒圭著『読む技術――速読・精読・味読の力をつける』が教えてくれたいくつかのストラテジー(戦略)は、読解力をつけたいと思っている生徒を相手に授業をするとき、きっと役に立つ。

「第六章 予測ストラテジー」の次の部分を、僕はさっそく授業の中で生かすことができた。

予測というのは、今読んでいる内容の延長線上に後続文脈を想定することで、次に来る内容を限定する行為です。(p.121)

予測を軸に文章を眺めていくと、文章理解は、文章を介した書き手と読み手の対話だということに気づかされます。優れた書き手は、読み手の理解に必要な問いを周到に準備し、それに答える形で文章を書きすすめます。一方、優れた読み手は、文章を読む過程で適切な問いを発し、その答えを文章から得ながら理解を深めます。したがって、読み手が予測を的確にできるようになると、書き手の意図を正確かつ効率よく汲みとれるようになるのです。(p.134)

「第十章 記憶ストラテジー」からは読解力だけでなく、表現力を伸ばす授業のためのヒントをもらうことができた。
というわけで、この本は同業者には絶対におススメ。