予習病患者?

予習という病 (講談社現代新書)

予習という病 (講談社現代新書)

まずは、「未来を切り拓くのに必要な学力=未来学力」を子どもたちに付けさせるべきだという日能研のポリシーには、賛意を表したいと思います。

先生が系統立てた、知識のパッケージをそのまま子どもに渡す受動的な学びではなく、子ども達自身が知識のつながりや構造を作り上げる能動的な学びを大切にしたいのです。

その「能動的な学び」を引き出すための具体的な取り組みも本書には紹介されており、参考になります。その中のひとつ、テストの答案を○も×もつけない「生答案」のままで生徒に返すというのは、主体的な学習を持続させるためには確かに有効な方法だろうと思います。
しかし、残念なのは、この本を最後まで読んでも、肝心な「予習病」というものの概念がすっきりと理解できないことです。
授業の内容を先取りして点数を稼ぐ予習よりも、想定通りにことが運ばなくても対応できるための「準備」や次の学習活動に活かすための「ふり返り」が大切だということはよくわかりますが、そのことを言わんがために、学びにとっての様々なマイナス要因を「予習」という言葉で括ろうとしたのは少々乱暴だったと思います。
読者は書名を読んで、その内容を「予習」します。この本は日能研の取り組みを紹介した本なのだということが分かる書名だったなら、もっと納得しながら読めただろうに、などと言ったら、そんなあなたこそ「予習病」患者なんだと言われてしまうでしょうか。