美術に一歩近づくために

美術の核心 (文春新書)

美術の核心 (文春新書)

古今東西の美術に関して全部で23のトピックをたてて、作品鑑賞の勘所をやさしく説いた入門書。
取り上げる美術作品は、縄文土器からコンテンポラリーアートまで。ダ・ヴィンチ、浮世絵、印象派、マンガ、…実に幅が広い。伊能忠敬の地図まで「江戸の美の代表」として取り上げられます。
当然のことながら、これだけ幅広くカバーしているわけですから、一つ一つの作品について網羅的に多くの情報を与えてくれるわけではありません。それでも読むうちに作品の本質にぐっと迫れたような気にさせてくれるのは、さすがに『…核心』と題しただけのことはあります。そもそも我々素人は、ある種の作品の前ではその美しさ、面白さをどう理解たら良いのか皆目見当がつかず、首を傾げて通り過ぎてしまうだけなのですが、一つでもヒントを与えてもらえれば、それを手がかりに一歩も二歩も作品に近づいていけるものなのです。


この本を読んで、行きたくなった美術館―
まず、豊田市美術館(ソフィ・カルの「盲目の人々」を所蔵)。

ソフィ・カルはストレートに、時として危険なまでの切り口をもって、私たちに人間の本質を示してくれます。特にこの「盲目の人々」は、美とは何かという根本的な問を私たちに投げかけています。目の見える私たちが、「見えるが故に見えなくなってしまっているもの」を鋭く表現している作品と言えるでしょう。

もう一つは、MOA美術館(尾形光琳の「紅白梅図屏風」を所蔵)。

この華やかで清楚、しかし同時にこれ以上ないくらいエロスに満ちた混沌を中心にかかえこむ光琳の「紅白梅図屏風」こそ、日本を超えて人類の絵画芸術の究極の到達点であると私は思っています。



「おわりに」を読むと、参考にした本として、先ごろ亡くなった加藤周一の『日本その心とかたち (ジブリLibrary)』が挙げられていて、これも読んでみたくなりました。千住博の他の著作も面白そうだし…
こんなふうに、行きたいところ・読みたい本は次から次へと増えていってしまうのです。


日本その心とかたち (ジブリLibrary)

日本その心とかたち (ジブリLibrary)