…たり…たり

「国語表現」の時間には、「休日は映画を観たり、買い物をして過ごしました。」のような文は、「休日は映画を観たり、買い物をしたりして過ごしました。」というふうに直すべし、と指導するのがお約束です。こういう場合の「たり」は単独で用いず、「…たり…たり」とせよ、ということですね。
ところが、実際にはこういう言い方はあちこちで目にします。たとえば、先日近所のスーパーで買った「新潟ぬれおかき 甘口醤油味*1」(岩塚製菓)の袋の裏側に印刷された「※注意事項」には次のようにあります。


 ・封入の脱酸素剤は、絶対に電子レンジで温めたり、召し上がらないようにご注意ください。


これで意味は充分通じるのですが、正しくは「温めたり、召し上がったりしないように…」でしょう。


先週自転車で浦賀から走水海岸のコースを走ってきたのですが、そのとき立ち寄った観音崎公園の一角に、西脇順三郎の詩碑が建っているのを見つけました。

刻まれているのは、詩集「近代の寓話」に収められた「灯台への道」という詩の前半部分です。読んでみると、ここにも「…たり」が出てくるんですが、もう一つの「…たり」が見つかりません。正しくは、


 いろいろの人間や
 小鳥の国を考えたり
 …
 いろいろな人間がいつたことを
 考えたりしながら歩いた



とすべきなのでしょう。いや、詩というものには、そうした「正しさ」を求めるべきではないのかもしれません。しかし僕にはこの詩の表現が全体的にどうも少しユルイように感じられ、その一因が、この「…たり」の用法にもあるような気がしてならないのです。

*1:美味しいです!