「伊藤憲孝ピアノリサイタル〜ベートーヴェンという名のオスティナート」を聴いて帰ってきたところ。
「オスティナート」とはプログラムによれば「頑固な、執拗な」という意味で、「ある音楽的なパターンを何度も繰り返すという場合に使われる」とのこと。ベートーヴェンという18〜19世紀の作曲家の曲が、いまだにピアニスト達の主要なレパートリーとして繰り返し演奏されているということ、これもまた「オスティナート」と言えるのかもしれない。
今回のプログラムの中では、1985年にアメリカの作曲家・コリアーノによって作曲された「オスティナート上の幻想曲」が面白く、一緒に聴きに行った仲間の中でも評判が良かった。ここにはベートーヴェンの第7シンフォニー2楽章のテーマが引用されている、つまり20世紀の音楽の中にベートーヴェンが響いている。
ロマン派の音楽の中にこのような「現代音楽」をはさんで、曲間に簡潔な解説を加えた演奏会は、若いピアニスト伊藤憲孝の音楽に対する知的なアプローチの一つの成果として、好ましく感じられた。
曲目
・ベートーヴェン ピアノソナタ「悲愴」
・コリアーノ オスティナート上の幻想曲
・ベートーヴェン ピアノソナタ「月光」
・シューマン 幻想曲ハ長調
・同 「トロイメライ」(アンコール)
会場 東京渋谷、公園通りクラシックス
後援 横浜シティ・シンフォニエッタ