通勤時間の正しい使い方

mf-fagott2007-01-13

ワケあって、新学期になってから自動車通勤を余儀なくされています。
電車を利用すれば行ける所なのに、自分ひとりのために2000ccの車を走らせて、排気ガスを撒き散らして地球の温暖化に加担していると思うと、少々後ろめたさを感じてしまいます。
それと、困ったことは、僕にとって電車に乗っている時間と言うのは貴重な読書時間なんです。自動車だと本が読めないんですね、当り前だけど。車の運転自体はむしろ好きなほうなんですが、通勤のルートは渋滞箇所も多く、決して快適なドライブではありません。CDを聴いていても、FMを聴いていても何だか空しく時間を浪費しているという気がしてならないのです。


何とかこの退屈な時間を有効に使う方法はないものか…


そこでハタと思いつきました。国語科の教材用ロッカーの中に小林秀雄の講演のカセットテープがあったんじゃないか? ロッカーを開けてみると、確かに『新潮社カセット文庫、小林秀雄講演』というのが4巻ありました。
それでさっそく昨日は、その中の「文学の雑感」と題したテープ(今はCDで出ているようですね。小林秀雄講演 第1巻―文学の雑感 [新潮CD] (新潮CD 講演 小林秀雄講演 第 1巻))を聴きながら運転して帰りました。
小林秀雄の声と言うのは意外と甲高く、近所のご隠居さんが縁側で管を巻いている、といった趣のしゃべり方で、あの眼光鋭く端正な顔立ちとはギャップを感じます。聴いているのが学生なので尚更なのでしょうが、「あんたら、山桜なんて知らんだろ、ソメイヨシノなんて、あんなのは低級な花なんだ。」といった、いわゆる「べらんめい調」も顔を出します。
しかし、自分のかかりつけの医者とのユーモラスなやりとりに始まり、桜から本居宣長、そして自らの歴史観へとつながる話の展開は実に面白く、運転手、いや聴き手を退屈させません。原稿が用意してあるわけではないようで、話はしばしば横道にそれてしまい、「意外と時間かかっちまうなあ」みたいな独り言も聞こえてきますが、運転手、じゃなくて聴き手を惹きつけて離さないところはさすがです。
まだカセットテープ8本のうちの1本を聴き終えたばかりですから、しばらくは通勤時間を退屈せずに過ごせそうです。ちょうど全部聴き終わったころには、電車通勤のできるカラダに戻っているハズです。