今日オーケストラの練習の時、いつも並んでファゴットを吹いているM君が歌集『伽羅の香』(田中博子著)を持ってきて、貸してくれました。この本のことを「折々のうた」で知ったことは以前書きましたが、先週そのことをM君に話すと、さっそく買って読んでみたと言うのです。僕を田中雅仁先生に紹介してくれたのはこのM君で、僕よりもずっと早い時期から先生のレッスンを熱心に受けていましたが、お母様が歌人でいらしたことはやはり知らなかったそうです。
巻末の著者略歴を見て、田中博子さんは定年退職するまで都立の高校に勤めていて、作歌歴は半世紀以上の長きにわたる方であることを初めて知りました。「辛くて、涙なしには読めませんよ」と言いながら手渡してくれた本を、練習の休憩時間にさっそく広げて読んでみましたが、息子と夫とにほぼ同時に先立たれた女性の心の有りようが率直に伝わって来ると同時に、先生の在りし日の姿が髣髴として、こみ上げてくるものを押さえることは出来ませんでした。
親よりも大切なりし楽器持ち颯爽とゆく最後の姿
心籠めし楽を奏して汝は逝けりCD十余枚に証を残す
足早の子よ少し待て十日後に汝を追ふ父の手を曳きてゆけ
先生が凌霄花がお好きだったことも歌集を読んで知ったことの一つです。
レッッスンのために荻窪のお宅に伺うと、お父様が庭の手入れをされている姿をお見かけすることが何度かありました。
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