緊急出版!?

 こんな本が「緊急出版」されたと知って、さっそく読んでみた。

  前の記事の続きの話になるわけだけど、本当にこれからの「国語」教育、どうなるんだろう? そしてどうするべきなのか? これはやはり目下の大問題だと思う。

 今回の「改革」に対して悲観的な意見ばかり言っていても仕方がないし、批判したところでもう決まってしまっている部分は今更どうしようもない。現場の人間としてできることをやっていくしかない。

 編者の紅野謙介は「残念ながら、この改革は百パーセント、失敗する」と言い切る。

それも、失敗だと自覚するのならば可能性はまだある。だが、失敗であることを自覚せず、やりすごしたままでは、だらだらと無限の失敗の道が続くことになる。
どこで踏みとどまるのか。空虚な器にどのように実質を込めるのか。
国語教育に関わる人たち、文学者や文学研究に関わる人たちがいま、こうした問いを突き付けられている。紅野謙介「いま『国語』の教育で何が起きているのか」)

  しかし、「問いを突き付けられている」はずの当事者の現状はこうだ。

多忙を極める現職の高校教員の中には、具体的に何が・どう変えられようとしているか詳しく知るだけのゆとりがない、関心を持つ余裕さえない、という人たちも少なからずいるのではないか。新しい「国語科」を推し進める側も、そうした現場の諦めと思考停止につけこもうとしている節がある。 (五味渕典嗣「新しい「国語科」は何が問題なのか?」)

  僕たちは重い「問い」を突き付けられていることを自覚し、「思考停止」に陥らないように努力を続けるべきなのだ。

新学習指導要領は、もはやどんなに批判しても変更することはできない。したがって今後は、その枠組みの中で子どもたちに身につけさせるべき「読解力」をどのように構築していくか、その中でPISA型読解力をどのように組み込んでいくのかという思考が求められている。大橋崇行「『PISA型読解力』に結びつく国語教育・文学研究」)

  その「思考」のための一助となるに違いないこの本が、多くの教師に読まれるとよいと思う。国語で「論理」を学ぶこと、「書く」ことの教育のあるべき姿、などについて考えるための具体的な提言、ヒントが満載だ。