句集を持って公園へ

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今日のように気持ちよく晴れた休日になると、外で陽を浴びながら体を動かしたいという気持ちが押さえきれませんが、一方では家でのんびりコーヒーを飲みながら読書を楽しみたいという思いもあり、このアンビバレンツ(?)な欲望を二つながらかなえるには、リュックに読みたい本とコーヒーを入れたポットを突っ込んで、気持ちよく過ごせるいつもの公園へと自転車を走らせるしかありません。

今回の本は、送っていただいた『大森藍句集 象の耳』です。


  枇杷の皮するり太平洋暮るる

  回転椅子くるりと亀の鳴く声か


「するり」「くるり」というオノマトペを介しての場面の転換が面白いと思います。回転椅子がくるりは当たり前ですが、「亀の鳴く声」に意外性を感じます。


  少年の腰に鍵束祭果つ


少年の腰の「鍵束」に目を付けたところに新鮮さを感じました。情緒不安定な年ごろの男の子の、ちょっと荒んだ内面まで見えてくるようです。


  春田まで課外授業の大太鼓

  芒野を曲がれば牛舎よりワルツ


自分は今、自宅からほんの数十分離れた公園まで来ただけですが、これらの句を読むと、もう少し先の方まで自転車を走らせたような気持になれますし、


  山眠るナフキンの立つ食堂車

  歯刷子を手に新涼の水平線


になると、ちょっとした旅気分です。充実したひと時を過ごさせてくれた句集に感謝。


  朝顔の紺や百万都市夜明け

  初桜鉄棒の錆不意に匂ひ

  人類にセシウム蛇は穴に入る