飢ゑし啼く海猫に日増しの北風嵐


 礼文島の岬巡りコースというハイキングコースは、北の端のスコトン岬から始まる。強い風に抗うように歩き始めて30分ほどの見晴らしの良い丘の上に、上村占魚の句碑がある。「海猫」は「ごめ」、「北風嵐」は「きたあらし」と振り仮名がふってある。
 「米の香の球磨焼酎を愛し酌む」と詠んだ占魚は熊本生まれだが、九州から遠く離れた北の果ての礼文島を何度か訪れたらしい。おそらく占魚は、礼文の句を多く詠み、この句はその多くの中から選ばれたのだろうが、碑が建つほどの句なのだろうかと考えてしまう。(いや、句碑なんて常にそんなものか…)「飢ゑし啼く海猫」は文法的にはどうなんだろう。