串田孫一の本はすべて山の本の棚にまとめてある。『山のパンセ』、『もう登らない山』など、山のエッセイ集や紀行文集などの中に、そうではない本も混ざっているが、串田孫一と言えば僕にとってはまず何よりも山の作家なので、その本は深田久弥や辻まこと等と並べて置かれてあるのが自然なのである。
その棚の中の一冊、『愛を語る壺』という詩集を読んでみた。山梨シルクセンター出版部というところから「抒情詩集シリーズ」の中の一冊として、昭和43年に発行されたものだ。
書名からも想像できる通り、これも山の本として括られるようなものではないが、それでもやはり読んでいると山の空気を深く吸い込んだような気持ちにさせられる詩が多いのである。
画帖
膝に画帖をひらき
風景を深く睨みながら
静かに
あるいははげしく
しかも自然に
鉛筆を持つ手を動かす
うまく描こうとする気持ちが
のさばらないうちに
絵が出来る
風景は私のものになった
それを私は
君に贈ることが出来るだろう
串田孫一は生誕100年なのだそうである。それを記念して開かれている展覧会にこれから行こうと思う。
●追記
串田孫一の展覧会に行ってきた。場所は小金井市立はけの森美術館。絵本の原画や、本や雑誌の挿画・表紙絵の原画、山のスケッチ…どれもみな良かった! 自宅の壁に掛けて飾りたくなるようなのがたくさんあった。
絵が描けるって、いいなあ。