愚直に貫くこと

(094)銀 (百年文庫)

(094)銀 (百年文庫)

 先日の小田原文学散歩で名前が出てきた川崎長太郎という作家を読んでおこうと思ったのだ。「兄の立場」という作品、なるほど、悪くない。巻末の「人と作品」によると、「私小説作家としての作風を愚直なまでに貫いて」云々とある。愚直に貫くってことが大事だな。
 併録されている小山いと子という作家の存在は、今までまったく知らなかった。その「石段」という作品はとても良かった。人間が生き生きと描かれ、じんわりと心に沁みる。たくさんの人にぜひ読んでもらいたいと思う。
 小山いと子について、「人と作品」には「作家としての志を捨てられないいと子は、子供を連れて家を出て夫との別居に踏み切った」とある。この人も、志を貫いたのだった。