牧野信一を読んでみる(その1)

 来週の日曜日は小田原文学散歩だ。
 その主催者から宿題が出ている。

 「小田原ゆかりの作家、牧野信一の一編を読んでおくこと。

 僕には、今まで牧野信一を読んだ記憶がない。今日は青空文庫からiPadにダウンロードして、短編数編を読んでみた。青空文庫はこんな時にとても助かる。それにiPad用の青空文庫のアプリはとても扱いやすい。
 「父を売る子」は牧野信一の代表作に挙げられているが、こんな自堕落な私小説ばっかり書いて終ってしまった作家なら、文学史上に名を残すことはなかっただろう。牧野信一は後に作風を変化させ、幻想的な作品も残したらしい。そっちの代表作も読んでおかねば。
 今日読んだ中で一番よかったのは、何となく題名にひかれてダウンロードした「清一の写生旅行」だ。清一という主人公は幼いころの作者自身をモデルにしたのだろう。場面場面で繊細に揺れる子どもの心のありようが、生き生きと伝わってくる、なかなかの佳品だ。