俳句と酒と美味いもの

句会で遊ぼう (幻冬舎新書)

句会で遊ぼう (幻冬舎新書)

句会の面白さを伝える本としては、小林恭二『俳句という愉しみ』『俳句という遊び』の二冊をまず思い浮かべる。これらは「当代一流」と言われる俳人たちによるハイレベルでスリリングな句会を実況した本だが、『句会で遊ぼう』で紹介される「醸句会」は、句会経験皆無の素人がちょっとしたはずみで始めてしまった、「いい加減」な句会。でも、実は著者が謙遜するほど「低レベル」ではない。メンバーは編集者、新聞記者、学者たちというだけのことはあって、さすがに日本語を操るセンスは日本人一般のレベルを超えている。席題であれだけの句をひねり出せるというのは、たいしたもんだと思う。俳句云々以前に日本語としてちょっと変、という句が続々と登場する我が「釘ん句会」とは、作品の質が違うと認めざるを得ない(悔しいけれど…)。ふらんす堂から合同句集を出しちゃうなんて、釘ん句会ではあり得ない(100年早い?)。
でも、俳句の上手い下手にかかわらず、句会は楽しい。句会のあとの酒は美味しい。(釘ん句会は、幹事役のU-ochさんがいつも美味しくてしゃれた店に連れて行ってくれるのも楽しみの一つ。)

一句に執心し(それほどではないという説もある)、○×印に必死になり(これはぼ同意してもらえる)、高点句に嫉妬し、自分の能力に絶望しつつ、他人の批評にキレる。爆笑・苦笑・憫笑・冷笑入り混じった濃厚な時間。そこに酒とうまいものが同居する。二カ月に一度、こころが解放される。こういうコミュニケーションは悪くない。そのとき俳句は絶好の媒介になるのではないだろうか。

ところで、釘ん句会でも、○(並撰)、◎(特選)だけでなく、×(逆選)を選ぶようにメンバーに提案してみようかと思う。逆選句に対するコメントは、場所を変えて酒を飲みながら、というふうにしたら、二次会の席もさらに盛り上がるかも…