ルイス・サッカーの『穴』を読んだ。昨年、『ブルータス』でその存在を知って以来、気になっていた本だ。
- 作者: ルイス・サッカー,幸田敦子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/12/15
- メディア: 文庫
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ところが、お約束のハッピーエンドが近づくにつれ、この小説にはなかなか凝った仕掛けが隠されていたことに気付き始め、前の方のページを何度も繰って、あちこちを読み返すことになる。結局、ずいぶん時間を費やしてしまった。
およそ百年の時を隔てた過去と現在とのつながりを発見し、今起きている出来事の意味に気付くことが、この作品を読む最大の面白さだ。これから読む人はそんなことを意識しながら、随所に挿入された「ひいひいじいさん」の時代の話を注意深く読んだ方がいいだろう。
一方で、冒険小説とは、生きる力とは何かを教えてくれる小説でもある。スタンリー君が最後に幸運をつかむことができたのは、彼自身が生きるための知恵を身につけていたからで、すべての結果が百年前から約束されていたわけではない。