本当のテーマは?

(010)季 (百年文庫)

(010)季 (百年文庫)

「百年文庫」は、今までに「音」「庭」「店」「灰」「幻」「家」を読んで、どれも読みごたえがあったけれど、今回の10巻「季」もまた充実した一冊だった。
円地文子「白梅の女」島村利正仙酔島井上靖「玉碗記」、どれも名作。「季」というテーマでまとめられているけれど、三作とも夫婦というものの不思議さというか、夫婦間の心の機微に思いをいたさずにいられないという点で通じるものがあると感じた。
このシリーズ、「音」とか「庭」というのは表向きのテーマで、実は奥に本当の共通項が隠されているんじゃないかと考えたくなる。
35巻「灰」に収められた三篇の場合、いずれも強烈な自意識を持った主人公(作者の分身と考えられる)が生への屈折した思いを抱えている、といった具合。
(035)灰 (百年文庫)

(035)灰 (百年文庫)