空虚な花

床屋で順番を待つ間、川端康成「白い満月」を読んでいた。すると床屋のテレビで今日4月16日は川端康成がガス自殺してから39年になるというニュースをやっていた。康成忌とは全く知らず、偶然康成の小説を読んでいたわけだ。
僕が読んでいたのは、「百年文庫」の第39巻。

(039)幻 (百年文庫)

(039)幻 (百年文庫)

ところで、僕はシャクナゲの花がなぜかあまり好きではない。それで、こんな一節が僕の目に止まった。

…庭は石楠花の花盛りである。つつじの大きい造花のようなこの花は、余りに派手過ぎるのに匂いがないためか、見ていると空虚な感じがして私の気に入らない。

匂いについては知らなかったが、作りものじみているのは確かで、僕が好きになれないのもそのせいかもしれない。小説中の「私」の思いは、おそらく川端康成自身の思いでもあるだろう。では、川端康成の好きな花は何だったろうか。一年でも最も様々な花が咲き乱れるこの時期に死を選んだということに、何か意味はあったのだろうか。