柔軟な教育システム

独学という道もある (ちくまプリマー新書)

独学という道もある (ちくまプリマー新書)

高校に行かず、通信制の大学から東大の大学院に進んで、経済学者になってしまった僕のような人間もいるんですよ、普通に高校、大学とまっすぐ進むのだけが人生ではないですよということだが、著者の現在があるのは東大の伊藤ゼミに偽学生として潜入し、寛大な伊藤先生の指導を受けることになったこと抜きには考えられないのだから、やはり学問にとって学校とか師弟関係の果たす役割というのは大きいんだなあということを感じずにはいられない。独学を語るのは、例えば白川静のような人こそふさわしいのだと思う。
それはともかく、著者が言う、

職業の選択にしても、働き方にしても、もっと多様性があっていいように思います。たとえば三年とか五年働いてから、もう一度大学に入り直して、博士号やMBA(経営学修士)を取って、どこかの会社に戻るというようなことがもっとたくさんできてもいいと思います。

というのはその通りだと思う。教員の場合だったら、免許を取るのに6年の課程を強制するより、学校現場で行き詰ったりもっと勉強したくなったとき、今以上に大学や大学院に戻りやすくしたり、働きながら大学に通うというようなことが可能なシステムを考えるべきなんじゃないか。学ぶためのシステムが柔軟になるということは、学校というところが本来あるべき姿、すなわち本気で勉強したい人間が集まる場になるということでもあるだろう。